野球肘とは?

投げる動作を繰り返すことで肘の筋肉や靭帯、軟骨などに負担がかかり痛めてしまうものを野球肘といいます。
成長期は骨よりも筋肉の成長が早く、また骨も弱いので肘の痛みを引き起こしやすくなります。
成長期のお子さんこそ体のどこが固いのかしっかりと見極めて予防のためのストレッチをおこなうようにしましょう。

野球肘を予防するポイント

①肩と手首を柔らかく

関節の動きというのはその上下の関節の影響を受けています。肘でいうと肩と手首です。
肩や手首の動きが悪くなると、その間にある肘の関節には過剰な負担がかかります。
例えば肩の外旋(がいせん)という動きが硬いと、肘の外旋の動きで代償します。肘の外旋がきつくなると野球肘になるリスクが高くなります。
肘が痛くても、肘だけでなくそれ以外の関節もしっかりと柔らかくしましょう。

②股関節の柔軟性

例えば、股関節が硬くなると肩や肘の力ばかり使って投げるフォームになります。
特に育成期の選手ほど股関節が硬く、下半身の筋力も少ないので上半身に頼った投げ方になってしまいます。
「肘の痛み」というとどうしても肘ばかりに意識がいきがちですが、このように下半身の硬さが原因で肘を痛めることもあります。
特にピッチャーの場合、股関節の柔軟性は球の速さやコントロールアップにも関係します。股関節の柔軟性はケガを防ぐ以前にピッチャーにとっては欠かせない要素なのです。

③「体の使い方」の大切さ

片足で立つとグラグラする、ケンケンがうまくできないなど、基本的な体の使い方がうまくできない子供が最近増えてきています。
例えば片足でしっかりと立つことができなければ、リリースポイントも不安的になり、結果的に肘に負担のかかるポイントで投げざる得ないこともあります。
野球の練習も大切ですが、野球以外のスポーツや外での遊びなどを通して、自然と体の使い方を育むことも大切です。
現に、メジャーリーガーのおこなうトレーニングでも、アスレチックや障害物を利用した遊びのようなトレーニングがあるほどです。

④ボールの握り方の重要性

基本的なことですがボールの握り方もとても大切です。
実はボールの握り方が悪いと、手首の動きが悪くなって結果的に肘や肩の動きも悪くなります。実際に正しい握りとそうでない握り方で手首を上下に動かしてみてください。悪い握りだと手首が動きにくくなるはずです。

ボールの握り方1
中指と人差し指の間、もしくはやや人差し指側に親指がくるようにします。人差し指よりも外に親指がくると肘や肩がスムーズに動きません。
ボールの握り方2
親指は深く曲げすぎないようにしましょう。深く曲げると手首がロックされたようになって力んだような投げ方になってしまいます。
ボールの握り方3
ボールと手の間は少しだけ隙間を開けるようにしましょう。深く握りすぎると手首の動きが悪くなり、リリースの時に指先に力が入りにくくなります。

ストレッチの注意点

ストレッチは練習前と練習後ではその目的が違います。
練習前は「今から動くぞ!」と筋肉に刺激を入れ活性化させることが目的です。専門的には「バリスティックストレッチ」といいます。これはラジオ体操のように反動をつけるような運動です。

逆に練習後は、筋肉の緊張を取ることと、筋肉を柔軟にすることが目的です。これは一般的なゆっくりじっくり伸ばすストレッチで「スタティックストレッチ」といいます。

ストレッチは状況に応じて使い分けるのがベストです。今回は予防のためのストレッチですので、ゆっくり伸ばすストレッチをご紹介します。

手首のストレッチ

手首のストレッチ

肘を痛める選手は手首が硬くなっていることが多いです。これは肘の筋肉が指先から手首を通って肘についているからです。
手のひらを下向き、上向きの2パターンおこないます。両方とも肘はしっかりと伸ばしておきましょう。20秒くらいじっくりと伸ばしてください。

肘内側ストレッチ

肘内側ストレッチ
特に肘の内側が痛くなったり張りやすかったりする選手はこのストレッチをおこないましょう。
写真のように地面もしくは台の上に手のひらを乗せてください。指先は自分の方を向いて指は伸ばします。
この状態から、小指と薬指を地面もしくは台から引き離すように伸ばします。こうすることで内側の野球肘の原因になる筋肉を伸ばすことができます。

胸から指先までのストレッチ

私がよく指導するのがこの胸から指先までのストレッチです。腕は指先から胸まで繋がっています。胸から指先まで連動させて伸ばすことはとても効果的です。

胸から指先までのストレッチ1
肩を90度くらいあげて肘をしっかり伸ばした状態で壁に手をつけます。指も伸ばしておきましょう。
まず指先は後ろ向き。反対側に体をひねるようにすると胸から指先まで伸びるのがわかります。硬い人はビーンとしびれ痛さのようなものが出ると思いますが、我慢できる範囲でおこなってください。
胸から指先までのストレッチ2
次に指先を下に向けます。先ほどと同じように伸ばしましょう。
このストレッチをおこないうと「巻き肩」も改善されるので野球肩にもオススメです。

手のひらのアーチを作るエクササイズ

手のひらのアーチを作るエクササイズ
足裏と同じように手のひらにもアーチがあります。手のひらのアーチが崩れると指先に力が入りにくくなります。この手のひらのアーチが崩れることも野球肘の原因の一つです。
まず1〜3キロほどの鉄アレイを用意します。

それを小指と薬指、親指の3本の指で握ります。このままの状態をしばらくキープするだけでもトレーニングになりますが、負荷を上げたい場合は前後左右にアレイを動かすと良いでしょう。

肘内側のエクササイズ

肘の内側の筋肉をトレーニングすることで、投げる時の肘の負担を軽減することができます。基本的には小指と薬指でグリップするようなエクササイズです。
写真のようなグリップボールを使っても良いですし、一般的なハンドグリップでも良いです。

肘内側のエクササイズ1
肘内側のエクササイズ2

股関節のストレッチ

股関節が硬くなると、上半身主体の投げ方になり肩や肘の負担が大きくなります。肘の痛みとは関係ないと思われがちですが、野球肘の予防だけではなくパフォーマンスアップにもつながります。

本気でピッチャーをしたい選手、肘の痛みを予防、改善したいと思われる選手はしっかりとおこないましょう。
股関節のストレッチについては「野球肩の予防」のページをご覧ください。

これらのストレッチは予防のために毎日練習後や、お風呂上がりにしていただくと効果的です。
ブログや公式YouTubeチャンネルでも肘のケアについて詳しく解説しております。

きっちりストレッチをおこなえば、防げる肘の痛みもたくさんあります。それでも全ての痛みを防げるわけではありません。そのような方は投球フォームを見直してみたり、きちんと治療を受けるようにしてください。

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